はじめに
本記事に掲載している内容は電気工学などの知識を有している方を対象としています。アンプを分解する作業を含むため感電による事故の可能性がありますので、自信の無い方はこの記事の手順を見て実際に作業しないようにしてください。
Carvin V3Mを中古で購入したのですが、販売した方に確認したところ2015年から2019年まで週イチ程度の使用頻度だったとのこと。365/7≒52週で、週イチ4時間使っていたとして52*4=208時間。多めに見積もって倍だとしても500時間未満です。一般的な真空管の耐久性で考えると5000時間程度なのでまだ10%程度しか使っていないことになります。
ということで、特に真空管の寿命が来ているわけではないのですがバイアス調整を試してみたかったのもあってパワー管を購入してみました。
パワー管EL84を購入
Carvin V3Mのパワー管はEL84を4本採用しています。ネットで新品購入できるのはヨドバシかサウンドハウスでした。値段の安さからサウンドハウスで4本マッチドのものを購入しました。
Electro Harmonix製のEL84をマッチドで4本購入
もともと付いていたEL84と比較
もともと付いていたパワー管もElectro Harmonix製だったので新旧ならべて撮影しておきました。
左が新品で右がもともと付いていたものです。Made in Russia
の下に1206
、2105
という刻印があり、おそらく製造時期がそれぞれ2012年6月
と2021年5月
という意味だと思われます。どちらのゲッターもまだ問題なさそうです。
バイアス調整の手順
Carvin V3Mのバイアス調整の手順はネットで検索するとPDFがあったのでこちらを参考に進めました。
Carvin V3Mのバイアス調整手順
- アンプ上部のグリルカバーを外してパワー管を交換
- アンプを上下逆さまにして台座に固定(今回はパワー管交換後、グリルカバーを戻した状態で逆さまにしました)
- アンプ底面の固定ネジ10本を外す
- スピーカー端子にスピーカーケーブルを接続
- 接続しているスピーカーにインピーダンスを合わせる
- POWER MODEを50Wに設定
- MASTERと各チャンネルのVOLUMEを0に設定し、ギターケーブルは外す
- 日本国内であれば120VACにして電源ケーブルを接続
- パワースイッチをONにし、最低15秒後にSTANDBYはONにして2分待つ
- テスターを電流測定モードにする
- STANDBYスイッチからの配線端子にテスターのケーブルを接続する
- STANDBYをOFFにする
- メイン基板上にあるバイアス調整用の可変抵抗を回して80mAに設定する
- STANDBYをONにして、パワースイッチをOFFにした状態でテスターのケーブルを外す
1.アンプ上部のグリルカバーを外してパワー管を交換
アンプの両側面にある合計4本のネジを外してグリルカバーを外します。
カバーを外すと真空管が見えるので4本のEL84を外していきます。軽くつまみながら上に引き抜くように外していきます。
真空管を交換したらカバーをもとに戻します。
2.アンプを上下逆さまにして台座に固定
次にアンプを上下逆さまにします。
3.アンプ底面の固定ネジ10本を外す
アンプ底面にある10本の固定ネジを外します。(ゴム足を固定しているネジは外さなくても大丈夫です)
4.スピーカー端子にスピーカーケーブルを接続
スピーカーケーブルを接続します。
5.接続しているスピーカーにインピーダンスを合わせる
インピーダンスを4Ω、8Ω、16Ωのうち、接続しているスピーカーに合わせて設定します。
6.POWER MODEを50Wに設定
POWER MODEを50Wに設定してください。(実際に音を出すことは無いので安心してください)
7.MASTERと各チャンネルのVOLUMEを0に設定し、ギターケーブルは外す
MASTERと1,2,3チャンネルの各VOLUMEをすべて0にし、ギターケーブルは外します。
8.日本国内であれば120VACにして電源ケーブルを接続
国内で作業する場合は120VACにして電源ケーブルを接続します。
9.パワースイッチをONにし、最低15秒後にSTANDBYはONにして2分待つ
POWERスイッチをONにし、15秒以上経ったところでSTANDBYスイッチもONにして2分ほど待ちます。
10.テスターを電流測定モードにする
テスターをDCA(DC電流測定モード)にします。下記の写真は20mに設定していますが、80mA付近を測定するため、このテスターの場合では200mに設定する必要があります。また、この写真にあるようにワニ口クリップなど固定できるようなものを用意してください。
11.STANDBYスイッチからの配線端子にテスターのケーブルを接続する
STANDBYの配線は高電圧になるため注意してください。端子に接続した状態でテスターのケーブルから出ている金属部分に触れると感電します!ゴム手袋など安全に注意しながら作業することをオススメします。
この作業をする際には必ずSTANDBYスイッチがONになっていることを確認してください。OFFの状態でテスターのケーブルを接続すると大きな火花が発生し、ヒューズが飛ぶ可能性があります。
写真左上にある、STANDBYスイッチから出ている配線端子にテスターのケーブルを接続します。この状態ではテスターの値はまだ0mA付近だと思います。
12.STANDBYをOFFにする
テスターのケーブルがしっかり固定されていることを確認したらSTANDBYスイッチをOFFにしてください。そうするとテスターの値が80mA付近に変わるはずです。この写真は90mAでちょっと高めです。
13.メイン基板上にあるバイアス調整用の可変抵抗を回して80mAに設定する
メイン基板上にあるバイアス調整用の可変抵抗を変更してテスターの値が80mAになるように調整してください。可変抵抗は写真の赤枠部分です。また、矢印の部分がツメになっていて、これを割り箸やプラスチックの棒などで回すことで抵抗値が変更できます。
くれぐれもドライバーなど金属製のもので可変抵抗を変更しないようにしてください。金属部分が他のパーツに触れてショートした場合、基盤が破損することがあります。
14.STANDBYをONにして、パワースイッチをOFFにした状態でテスターのケーブルを外す
通常であれば、STANDBYをOFFにしてからパワースイッチをOFFにしますが、ここではテスターを保護するためにSTANDBYをONにしたままパワースイッチをOFFにしてください。その後テスターのケーブルを外してパネルなどをもとに戻します。その際、本体や真空管が熱くなっているので注意してください。
さいごに
もともと問題のなかったパワー管が付いていたので、交換前後で音の変化は特に感じられませんでした。ただ、バイアス調整の手順を一通り経験できたので今後のメンテナンスで役に立ちそうです。